物流CEOインタビュー[No.020]
「東北の軽貨物業界を変える」
今回の物流CEOインタビューは「株式会社Fastest 」の加藤社長です。株式会社Fastest は令和3年4月に設立され、宮城県宮城郡七ヶ浜町遠山3-1-46 102に本社を置く物流企業です。加藤社長の経営思想を物流CEOナカノヒトが紐解きました。それでは、インタビューを見ていきましょう。
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株式会社Fastestの加藤社長のキャリア
ーーーこれまでのキャリアを教えていただけますでしょうか?
加藤社長:運送業は今まで全く経験がありませんでしたね。私はもともとオートバイのアマチュアレーサーなのですが、レース車両を配達したりレースサーキットに搬入しているトラックや小さい車が来たりしている中で、経営者がたくさんいることを見てきました。 一度レース業界から離れたときに、以前から目にしていた物流というものが頭に浮かびましたが、東北という場所で通用するのかというのは1つの課題だと感じましたね。東北は案件も少なく、会社さんは大手運送業者さんから独立して昔からやられているという流れが多いんです。経営者さんは50、60代くらいの方が多いのですが、そこに飛び込もうと思いました。
―――なぜ運送業を選ばれたのでしょうか?
加藤社長 :本当は物流業をやりたいと思っていませんでした。コロナウイルスが始まって1、2年くらい会社員をやりながら起業するには何がベストか、飲食店も考えましたが今はとても難しいです。その中で宅急便の需要が増えてきたこと、若い経営者が東北にはいないこともあり、チャンスだと思ったからです。
―――最初の案件獲得やその後の開拓はどのようにしましたか?
加藤社⻑ :起業して最初は、自分と現在の専務である同級生と自分の弟の3人で、全員未経験でスタートしました。 また、起業していない状態で、宮城県内でやられている軽貨物会社さんに足を運んで、これから起業しようと思っているのですが、どういった仕事があってどれくらいの需要がありますかと聞きました。誰とでも最初からフランクに話せるのが自分の強みなので、4社5社くらいに話を聞きましたね。その中にフードデリバリーがあったのでそこから参入して、ヤマト運輸さんにアプローチしていきました。
株式会社Fastestについて
―――御社の事業や会社の特徴、強みを教えていただけますか。
加藤社⻑ :現在は3つの事業を行なっています。メインは軽貨物事業ですが、それに付随して車両の広告事業をやって、あとは黒ナンバーのリースです。リースは、弊社所属のドライバーさんに限らず、個人でやられている方の車が故障した時に車を貸し出しています。
―――広告事業もやられていますよね。
加藤社長 :これもレースに繋がっていて、レースのスポンサーという形で車両いっぱいにいろいろな企業さんが貼っていると思うのですが、そのやり方を取り入れています。昔からの知り合いが看板屋さんなのですが、作ったデータを看板屋さんにラッピングできるようなシートにしてもらっています。コロナウイルス関係でイベントも下火でしたが、今後は増えていくだろうと考えているので、イベント会社さんと連携してやっていけたらと思っています。
―――貴社の経営理念について教えていただけますか?
加藤社⻑ :ドライバーさんあっての委託会社なので、ドライバーさんと会社のどっちかが儲けるのではなく、お互いに利益を上げられる関係性を作り上げていきたいと考えています。
―――「自分の可能性を限りなく引き出す」という言葉がありますが。
加藤社⻑ :自分はこういった性格なので、可能性がないということが嫌いです。自分は未熟ですが、ドライバーさんがうちに来てくれたらドライバーとしての可能性だけではなく、向き不向きもあると思うのですが他の才能を限りなく出して、会社と一緒にいろんな事業を立ち上げていきたいという意味でこの言葉を使っています。
―――ドライバーさんの採用で意識されていることはありますか?
加藤社長 :みなさんやりたくて来ているので、不採用を減らしていますね。定年してからも稼げるというのも魅力で、寄り添った形で採用を行なっています。 また、これからですがハウスクリーニングの事業を考えています。コロナウイルスの関係で殺菌除菌は注目されているので、年齢が高い方で運転が厳しくなってきた方に関しては、うちで別事業を作ってやっていただこうと思っています。せっかくのご縁でいただいた出会いなので、やめるのではなく引き続き一緒にやっていけたらとドライバーさんと話しています。
―――貴社のビジョンや展望を教えていただけますか?
加藤社長 :軽貨物運送の業界では手数料問題がかなり問題視されています。ドライバーさんとの関係の中で必ずぶつかるところなのですが、その平均値を下げるということをまず目標にしています。10〜15%が平均だと思うのですが、弊社は5%を目指しております。会社の利益を確保するという意味でも確かに取るべきなのですが、この1年やってみてそこまで取らなくても会社を回せると感じました。デジタル化が進んで管理も楽になってくるし、管理者を多く利用するわけでもないので、そこは時代に沿って進めていければ可能だと思っていて、もし同じ考えを持っている会社の代表がいれば、東北でそういうグループを作ってやっていけたらと考えています。
―――様々な事業を展開されていく中で、運送事業というのは軸になっていくのでしょうか?
加藤社⻑ :はい。ドライバーさんが潰れるやり方を一掃して、新しい風を吹かせたいと思います。2024年の運送業の働き方改革が1番の問題に上がってきているので、そこを改善するためにはドライバーさんに残ってもらわないといけません。その前にはインボイス制度があり、税的な問題でもかなりドライバーさんが離れる可能性があると思うので、それも考えつつ、大手運送会社さんが求めているやり方などをしっかりとやりながら働き方を変えていかないといけないと考えております。 東北と関東では日当の相場が違います。アマゾンさんで言うと、関東の方だと20,000円から25,000円くらいが平均だと思うのですが、東北では18,000円です。荷物量はそんなに変わらず、ドライバーさん1人200個くらいを配送していますね。そこは何を求められているのかを見定めることで単価を上げることは無理ではないと思うので、業界を変えていければと思っております。
株式会社Fastestの加藤社長が思う今後の物流業界について
―――2024年問題やインボイス制度など、今後の物流業界がどうなっていくと考えられていらっしゃいますか?
加藤社長 :インボイス制度に関しては、フードデリバリーがここ数年で一気に拡大したと思うのですが、東北では需要がなくなってきて下火の状態です。おそらくインボイス制度が始まった段階で黒ナンバーを所有して軽貨物の仕事をしている人が2/3まで減ると思っています。そうなると、個人事業主として品質が高いしっかりとした働き方でやっている方が必要になってくるので、人手不足になると考えています。また委託会社では軽貨物という仕事をアピールして人を集められるかでかなり変わると思いますね。 働き方の2024年問題に関しては、佐川急便さんの支店長さんや幹部の方と話をしますが、現在ドライバーは週休1日、日曜日だけ休みで一つのコースを回していますが、それが確実に週休2日になると言われています。そこを回すための代走要員が必要になっていますので、単純に考えて10台いたら15台必要になってくるという感じです。そのため、当分の間、人手不足が続くのではないかと思っていますね。軽貨物の需要はあるのですが、手数料問題がこの数年で表に出てしまったので、イメージ、やり方を変えていかないと人が集まらないのではないかと思っています。
―――自動運転やドローンについてどのようにお考えでしょうか?
加藤社⻑ :東北だと田舎の離れたところ、それこそポツンと一軒家のように離れたところに集落があったりするので、ドローンの配送を取り入れられたら配達しやすくなると思っています。遠くの人が行くまでもないところの配送はドローンに任せて、主要部の身近な地域は人間が今までの配達をするというシステムになれば、より効率化が図れると思うので賛成です。あれは面白いですね。
―――地方の方が日当が安いのに距離は走っていると思ってます。ガソリン代も高騰していて歪な構造になっていると思うのですが、解決策はあるのでしょうか?
加藤社⻑ :聞いた話ではアマゾンさんがいて、間に大手運送会社さんがいて、軽貨物委託会社に流れてくる、その流れで抜かれている手数料が大きいという問題もあります。実際は関東と変わらない単価で来てるのかもしれませんが、そこの具体的なお金の話は入ってこないので何とも言えないところです。
―――今後地方展開を考えている企業も増えてきています。地方ではどのように展開していくべきなのか教えていただけますか?
加藤社⻑ :お金の面で言ったら、ドライバーさんは手数料を取られたら生活ができません。そこをどれだけ委託会社で儲けを減らして、ドライバーさんに還元できるかっていうのもありますね。地方の人特有なのかは分からないですが、コミュニケーションを取って配達することがかなり大事なので、確実に管理者をつけないとだめだと思います。近くに支店を設けるか、所属するセンターごとに管理者をつけるかという問題があって、実際に関東の会社さんが来て東北に支店はないけど所属だけでやっていける会社を聞かれます。自分の方にも関東の会社で東北にこういうドライバーさんがいるんですけどお仕事もらえませんか、という電話をもらうんですが説教しているんです。どれだけ管理に時間、手間がかかるか分かるよね、手数料だけ抜いてそんなふざけた仕事するなっていつも言ってやるんです。そこは大手さんでトラックとか回してて、軽貨物事業部がある会社さんであれば支店とか設けられるのですが、軽貨物だけで圏外に支店を作るのはお金もかかるし、時間もかかります。そこをちゃんと東北で支店を作ってドライバーさんの声を聞いて寄り添っていかないと拡大はできないと思います。
―――採用に関してなど、メッセージがありましたらお願いいたします。
加藤社長 :東北の軽貨物事業を変えるので、一緒に働きましょう。変えていかないとこの業界は潰れてしまうだろうし、東北ではもう稼げない業界と白い目で見られています。関東にも入っている大手のグループ、FC展開しているところに所属していると15%の手数料が下げられないということがあります。軽貨物の会社も大きい小さい関係なくするとかなりあると思うので、ちゃんと精査してグループを作っていければいいなと思っています。 東北は東北の会社で間を挟まず、東北のグループでやっていければ改善されるのではないか、それを先人切ってやっていこうと考えております。
物流CEOナカノヒトより 「加藤社長、インタビューのご協力ありがとうございました。」
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- 会社名 :株式会社Farest
- 代表者 :加藤社長
- 設立 :令和3年4月
- 本社住所:宮城県宮城郡七ヶ浜町遠山3-1-46 102
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