物流CEOインタビュー[No.005]
「共につくるという意味で運転の"運に創造の創『運創会社』」
今回の物流CEOインタビューは「株式会社ニシテ商会」の西手社長です。株式会社ニシテ商会は平成23年4月に設立され、愛知県名古屋市港区西福田1丁目906番地に本社を置く物流企業です。西手社長の経営思想を物流CEOナカノヒトが紐解きました。それでは、インタビューを見ていきましょう。
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株式会社ニシテ商会の西手社長のキャリア
―――ご家族で経営されているということでしたが、西手社長のお父様から引き継がれたのでしょうか?
西手社長:ニシテ商会自体は私が創業なんですけれども、元々父親も一人でトラックを乗ってたというのもあって始めました。僕も最初は白ナンバーで初めて、ウチの親父も一人従業員をかかえて白ナンバーでやっててという感じでした。僕も最初は親の手伝いという形でやってて、ちょうど23歳の時に創業したんですけれども、親父が怪我をしてしまって、「ちょっと手伝ってくれないか…?」ということで、手伝いから始めたんです。それで、その時たまたま取引先の人が、「運転手が辞めちゃったもんで、西手さんやってもらえないかな…?」という形で、そこの専属の担当をするということがありましたね。
―――運送業をされるというのはお父様の影響が大きかったのでしょうか?
西手社長:そうですね。小さい時からよくトラックの横(父の隣)に乗っていろんなところに行ったり、仕事の手伝いをしたりとかはやってたので、入りやすさがありました。高校卒業してからは自動車整備会社に4年間勤めてました。車が好きという単純な理由ではありましたが(笑)そこも親父の知り合いのところでして、トラックを整備してくれてた会社なんですけれども。そこで4年間勉強して、整備士免許を取って、その後土木の仕事を2年ぐらいやったんですけど、ちょっと合わんなあ…ということで辞めて。そうしたときに親父が怪我をしたんです。それで「お前がやれ」みたいな(笑)
―――運送業は様々な困難やトラブルが多いかと思いますが、創業時のエピソードはありますか?
西手社長:とりあえず最初は材木の仕事をやっていて、その絡みで自動車部品(大手メーカー)に関連する企業さんにも配達をしていまして、そことやり取りをしていたら運転手がいなくなっちゃいまして。参ったなあと(汗) それで僕から地元の子の何人かに声をかけて、なんとかしましたが(苦笑い)その仕事でトラックを1台増やして、さらにその関連で仕事も増えて合計3台でやっていました。そしたら運悪くリーマンショックがおきまして。大手メーカーさんの関連会社だったので大丈夫だろう、と思っていたら仕事が1/8になっちゃって。今まで1日4回走ってたのが「2日に1回でいいよ。」って言われて、「後の2台(所有していたトラック)ももういいです。」ってなっちゃってね。
その時に、1人が取引をしていた企業さんにお願いをして雇ってもらって、もう1人は「西手社長についていきます。」って言ってくれてね。給料も半分以下だし、仕事もあったりなかったりだったのにね。その子はなぜかついてきてくれたんです。ちなみに、その子が今の会社の部長として、創業メンバーとしてやってくれています。ウチの息子が高校卒業するときに「親父の仕事手伝うわ。」って言ってくれたんですけども。創業時のメンバーのこともありますし、同業他社さんにお願いしてそっちで2年間仕事をさせましたね。その当時は自分達もそこまで仕事がない時代でしたし、今の部長(ついてきてくれた子)も息子と同じ会社さんで預かってもらう形でやってもらいましたね。(汗)自分は(西手社長)大手メーカーさんの関連会社さんとの仕事があったので、それをやりながらなんとか、って感じでしたね。
株式会社ニシテ商会について
―――具体的な事業内容についてお聞きしてもよろしいでしょうか?
西手社長:リーマンショックがあったので単体で請け負うのは辞めようかなと思いまして、家電の配送だったり建材の配送だったりいろいろやったんですけども。まあ、従業員もかかえていました。ともかく、その子たちに給料を払えるように色々やりました。そういうのが何年も続いて、やはり給料もまともに払ってやれなくて。人も入れ代わり立ち代わりになってましたね。そんな時に息子が「俺も会社(ニシテ商会)に戻って、仕事手伝うよ」って言ってくれて。最初は本当にがむしゃらに走るだけの感じだったんですけれども、やっていく中で人間関係も構築出来てきました。そしたら、お声がけいただける会社さんも増えてきましたね。
ニシテ商会の社訓として”凡事徹底”という言葉を掲げているんですけれども、やれることをきっちりやろうということですよね。それをもとに僕と息子と部長の3人が中心で、あと2人ぐらい従業員がいる会社でした。そして、とにかく何でもやっていこうということで、数年はがむしゃらにやり続けましたね。息子には申し訳ないと思っていましたね。給料も5割程度しか払えなかったし。その中で何年も働いてくれて。そうやっているうちに、いろいろなお取引先からの支援があったりだとか、声かけがあったりとかで徐々に良い方向に向かっていきましたね。
5年ぐらいやったときに、変換点がありましてね。よその会社さんからウチに入ってくれる人が増えたり、仕事の内容もある程度利益を確保できるものが入ってきたりだとかで、ほんと徐々に軌道に乗っていった感じでしたね。2年ぐらい前(2019年ごろ)に、車も増えてきたということで車庫を変えまして、それが当初の3倍の敷地だったので5.6台しかなかったものですから、これどれぐらいになったら埋まるんだろうな?って思ってましたね(笑)幸い1年経たないぐらいで、人は1年目に4人,2年目に5人かな?それとともに車も増えてきて今の形になりましたね。
―――”健康経営”というのも掲げていますが、このテーマを掲げた理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?
西手社長:最初のキッカケは、僕以外の今いる部長や課長、息子だとかがヘビースモーカーで(苦笑い)車乗ったらすぐみたいな(笑)ただ、なんかのタイミングで部長が「やっぱり長いこと考えたら健康も大事なのかなあ。」ってことでタバコを辞めたんです。それを聞いてまあ、よう辞めましたな~(笑)なんていうことも言ってたりしてね(笑)
でもやっぱり、これからは会社も健康思考でいこうって話がでまして、そしたら部長とかも「俺たちも辞めなきゃダメでしょ!」ってなって、1週間ぐらいはしんどかったみたいですけど。ただ、そうやって健康に対する意識づけもできてきて、それが他の従業員さんにも良い風に広がっていったっていうのがありました。今だとバイトの方含めて21人ぐらいいるんですけども、喫煙者は数える程度しかいませんね。
ウチは2階にトレーニング機器を置いているのですが、それがあることでジム通いしていた子たちも「会社の使いますわ!」ってことで、2階のジムで一所懸命やってくれる子がいたり。意識的にでも、会社全体で健康に対する考え方が変わっていきましたね。そうしたおかげで、今年はスポーツエールカンパニーを認定(全国で623社が認定:2021.1.29時点)いただくことができたりだとかですね。(『スポーツ庁では、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取組を行っている企業を「スポーツエールカンパニー」として認定しています。』
スポーツ庁: https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/list/1399048.htm)
*運送業はまだ全体の3%程しか認定がない。(取材時)
そういったことで、大手さんと車や人の量では勝負できないかもしれないけど、”ドライバーの質”や”ドライバーの対応”といった面では、内側も外側も徹底してスキルアップしているので自信があります。運送業は運べば終わりみたいな感じが多いじゃないですか(汗)オラオラした人とかもいましたしね(笑)僕も昔は大胆な仕事だったかもしれませんし(笑)でも、そういうイメージって今じゃ全く違いますよね。当然ニシテ商会にはそういう人はいないですし。対応は丁寧にやっていますし、お客様のアフターフォローもきちっとしています。荷物の置き順にしても日付ごとで前後入れ替えてあげたりだとか、そういったひと手間を惜しまないようにしています。「ニシテさんなら、間違いないよね!」っていてもらえるように。そうしたところも心がけていますね。なので、仕事の種類は業界職種問わず本当にさまざまですが、良い意味で広く浅く取り扱わせていただいてますね。
―――家族経営の難しさはなんでしょうか?
西手社長:よくも悪くも授業員からしたら”息子”の存在は関係してくると思います。やはり、社長の息子ということもあり、従業員が息子に対して思う部分があるというのは十分理解しています。なので、あえて息子には厳しい仕事を与えているつもりではいます。しかし、中には厳しい意見をくださる方がいることも理解しています。再度繰り返しにはなってしまうのですが、そういった部分(息子に対する思う部分)があるのを理解しているからこそ、息子には厳しい仕事を与えているつもりです。僕も、社長だからといって事務所にいるだけではなく、現場に立ってみんなの声も聞いたり、ドライバーと走ったりもします。すごく難しい部分もあるかもしれません。でもやっぱり、身内だけが良ければ良いんだろう、と思われないようにそこはきちっとやっているつもりではいますね。
今は配車は息子にまかせて、僕はドライバーとしてやってたりもします。かえって息子が僕に「これくらいいけるっしょ?」みたいにして配車を組んだりもしてね(笑)ただ、冗談みたいな配車の組み方をしたとしても、僕はなるべく全て了承するようにしています。やはり”仕事”なのでそこはきちっとやるようにはしてますね。
株式会社ニシテ商会の西手社長が思う今後の経営・物流業界について
―――では、御社の今後の展望や、目標がありましたらお聞かせいただけますでしょうか?
西手社長:やはり、ニシテ商会で働いていることを従業員が友達とかに自慢できるような会社を目指してますね。例えば、休日とかで友達同士集まったら会社の愚痴とかもでるとは思うんです。でも、ウチの子たちはプラス思考な会話で会社の話ができるっていうね。そういう会社づくりを目指してますね。当然、ご家族の方に「ウチの旦那全然帰ってこんわ~!!」って言われるより、「ウチの旦那早く帰ってきすぎて困るわ~(笑)」って言われるぐらいの方がいいわけですよ(笑)実際ウチ(ニシテ商会)に入ってきてくれた子たちからは「こんな明るいうちに帰っていいんすか?(笑)」みたいな声もあったりするんです(笑)
そんな風に、従業員のご家族にも貢献できればいいかな、なんても思ってますね。長く勤めてくださってる方だと健康面の心配をご家族がされていることもあります。そういった健康面の支援も会社のほうからできればいいなとは思っていますし。ウチ(ニシテ商会)の会社に入ることで”健康”についても考えるキッカケになればいいのかなと思ってますね。
―――物流業界の今後についてお聞かせいただけますでしょうか?
西手社長:やはりコロナの影響があったり、軽貨物の需要が急増したりとかってのはあると思うんです。働き方も変わってきたりとかね。ただ、そうした中で荷物をぞんざいに扱うのはよくないですよね。ウチの場合は丁寧な配送を心がけるってことを口酸っぱくいっているので、お客様にも選んでいただけることが多くなってきているんです。なので、やはり”質”にこだわることが一番大事なんじゃないかなって思いますね。ドライバーさんありきじゃないですか?だからこそそういったところで生き残れるかが決まるんじゃないでしょうかね。実はコロナの影響でお仕事がなくなったところもあるんです。でも、日々”ドラバーの質”にこだわっていたことで、新規のお店製作に関わったりとかができたんです。今まであった毎日のルート配送が無くなっても、”ドライバーの質”にこだわり続けてきたことで、そういった形でも選んでもらえる会社になれたのかなと思います。
当然、売上的には毎日配送したほうがいいにこしたことはないんですけど、他社さんが売上0とかになる中残れたっていう。本当に”ドライバーの質”にこだわった結果だと思っていますね。ルートに関しても①~⑤だったものが⑥とか⑦もついてくるようになったり(増減があるにしても)しますが、やはり元請けさんが求めてくることに対して臨機応変に対応できるようになるってのも大事なのかなと思います。当然、働く時間が多くなればドライバーさんからの苦情もでてくるでしょう。ただ、それを出さないようにする工夫は必要ですよね。実は最近ウチでも「もう少し現場の声も聞いてほしい」とかがあって、その声を上層部まで届けるようにしようとかね。それはドライバーさんから私(社長)とかもあるでしょうし、その子たちの上司とかもあるだろうしね。いずれにしても、そういった第一線の状況をしるっていうのも大事かなと思いますね。
―――最後、この記事を読んでくださっている方に向けてひとこといただいてもよろしいでしょうか?
西手社長:“健康経営”もそうなんですけど、あくまでも荷主さまの満足を求められるのが運送会社であると思ってるんです。まあ、それを共につくる,送るっていう意味で「運送」っていう字があると思うんです。去年の社内MTGでいったのが、共につくるという意味で、運転の”運”に創造の”創”で『運創会社』。ウチは共につくるという意味で『運想会社』と、社訓である”凡事徹底”をかかげています。なので、ウチに限らず、ドライバーさんは、ただ単に運べばいいという考えではなく、自分たちも会社をアピールする一員であるという意識をもつことが大切だと思います。そうすることで、「あそこに頼んだらいつも笑顔で荷物届けてくれるわ~」とかって言ってもらえるんですよね。そうしたことが評価につながると思いますしね。
あとは、ウチだと、ドライバーさんとの距離感ですよね。どうしても規模感あるところだと社長とドライバーさんとの距離ってのがあると思うんですけど、ウチは割と近いので、要望だったり提案だったりとかはすぐに対応できる体制です。なので、そこを強みとして、ドライバーと共に会社を育てようと思ってます。うん、やっぱりウチは『運創会社』を目指していますね。
物流CEOナカノヒトより 「西手社長、インタビューのご協力ありがとうございました。」
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- 会社名 :株式会社ニシテ商会
- 代表者 :西手社長
- 設立 :平成23年4月19日
- 本社住所:愛知県名古屋市港区西福田1丁目906番地
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